会議所ニュース「まちの羅針盤」に熊谷市が掲載されました。

日本商工会議所が月3回発行する新聞「会議所ニュース」で人気の連載記事「まちの羅針盤」において、熊谷市が掲載(令和7年7月11日付)されました

航海に地図と羅針盤が必要なように、地域づくりにも現状を示す客観的なデータが欠かせないとし、地域別経済循環図など、熊谷市のデータを分析し、産業構造の現状と可能性を踏まえ、まちの羅針盤(地域づくりの方向性)を解説されたものです。

  ---示唆に富む解説をいただき、ありがとうございました。


 

出典 :   日商 Assist Biz  中小企業と地域の商売繁盛・企業事例が満載!
               「2025年7月11日 会議所ニュース(日本商工会議所)」より

 

 

航海に地図と羅針盤が必要なように、地域づくりにも現状を示す客観的なデータが欠かせない。今回は、埼玉県北部の拠点都市で、人口19万人を擁する熊谷市について、産業構造の現状と可能性を踏まえ、まちの羅針盤(地域づくりの方向性)を考えたい。

産業都市の強みと弱み

「暑い町」として知られる熊谷市は、荒川と利根川が流れ、豊富な水と自然がありながら交通アクセスにも優れている。17号など4本の国道が通るほか、秩父鉄道やJR高崎線、上越・北陸新幹線が走り、東京駅まで最短約40分の距離にある。そして、江戸時代から中山道の宿場町として栄え、現在も、労働生産性1116万円超(全国平均935万円)を誇る埼玉県内トップクラスの産業都市である。

「生産→分配→支出」と所得が流れる地域経済循環を見ても、ヒトが集まるから民間消費が、モノが集まるから民間投資が、貿易黒字でカネが集まるから域際収支が、いずれも流入している。そしてこの構造はここ10年変わっていない。

このように経済は盤石であり、一見すると課題はないようにも感じられるが、実は人口減少も埼玉県内トップクラスである。その結果、空き家率は14.6%と、埼玉県平均9.3%のみならず、全国平均13.8%も上回り、将来の負の遺産が積み上がっている。

これらの要因はさまざまであるが、分配段階で域外の本社に巨額の利益移転が生じている結果、住民1人当たり所得が420万円と全国平均427万円を下回っていることも、その一つであろう。工場などがあって労働生産性は高いが、都市圏にある域外本社に利益が分配されるため、住民の実際の所得は低いという地方産業都市の典型的な経済循環構造である。

本社的機能の「地産地商」を

域外本社への利益移転による影響は、住民所得が低下するだけではない。それに伴って本社機能的な仕事が域外に流出することが大きな課題である。

熊谷市の産業別純移輸出入額を見ると、本社の経営企画に相当する「専門・科学技術、業務支援サービス業」や「卸売業」などが移輸入産業となっており、仕事が域外に流出していることが分かる。また、「化学」が移輸出額の3分の2を、地域GDPの4分の1を占めており、産業都市の内実は、多様性に乏しい「化学」一強の経済構造で、バラエティーに富む魅力的な職場を提供できていないといえる。

6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」において、「人口流出に歯止めがかからなかったのは、若者や女性の流出に関する問題の根源の一つである地域に魅力的な職場がなかったこと」と指摘されている。これまで強みとなっていたある種の均一性が、急激な人口減少局面では持続可能性を妨げている可能性がある。

ただ、こうした課題を意識してかは不明だが対策の動きは出始めている。地域課題の解決を通じた官民連携のまちづくりを担う株式会社まちづくり熊谷の設立、まちの将来像を市民と共有する「熊谷まちなか再生未来ビジョン」の策定など地域の魅力を広げ、深みを持たせる取り組みが行われている。スマートシティーの取り組みも「情報通信業」の大幅な移輸出超過(貿易赤字)を抑制し、地域に新たな産業や価値を生み出す可能性がある。

また、こうした取り組みの効果は、リノベーションなど具体的な取り組みに対し、資金を出すだけの補助金ではなく、ある種の伴走支援が伴う出資や融資などを提供することで高めることができ、地域をマネジメントする能力やプレイヤーが生まれ育つことになる。

産業都市としての強固な基盤があるからこそ将来のリターンを見据え、ファンドを設けるなどしてまちづくりのスタートアップを呼び込むこと、こうした地域全体のマネジメントを行う機能を地域で生み出し活用することで地域の本社機能を内在させること、これが熊谷市に求められる「まちの羅針盤」である。

(一般財団法人ローカルファースト財団理事・鵜殿裕)

 

【参考リンク】

〇 日商 Assist Biz 
〇 まちの羅針盤
〇 RESAS
  地域経済分析システム
〇 熊谷市の地域経済循環分析
『出典:「地域経済循環分析」(環境省、株式会社価値総合研究所)』  
〇 注意 抽出の時間差により、本文記事データと若干の差異があります。

 

2025年7月29日まちづくり熊谷
カテゴリー:お知らせ

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